モームの傑作選「ジゴロとジゴレット」を読んで人間を学ぶ
サマセットモームの短編集「ジゴロとジゴレット」を読み始めた。
以前、モームの短編「雨」を読んだ時に人間がもつ矛盾みたいなのをアイロニカルに書きあげる作風が印象的で、機会があれば他の作品も読んでみたいと思っていた。
このジゴロとジゴレットという小気味良い響きだけで気に入り購入に至ったわけだが、まだジゴロとジゴレットは読んでいない。
というよりこれを読むと終わってしまうので楽しみにとってあるという方が正しい。
どれも短編ながら読みごたえがあってはずれがないし、すっきりしない終わり方もまた様々な感情を引き出してくれる。
人物や情景の描写も想像がしやすく、様々なキャラクターの人生の一部分を覗き見しているような作品集。
改めて人間とは不可解な生き物だと思ったのと、人生は一筋縄ではいかないからこそ面白いんだと痛感した。
今回お話したいのは、バカリさんか三谷さんがつけそうな題名の「アンティーブの太った三人の女」について。
アンティーブとは南仏の地中海に面した港町で、カンヌとニースの間に位置している。
このお話は題名通り太った三人の女性の話だ。共通点はトランプゲームのブリッジとダイエット。
そこに、スレンダーでブリッジが上手い女性が仲間に加わり…
もうこの説明だけで一悶着ありそうなのは想像に難くないだろう。
実にユーモラスな傑作だが、お話したいのは内容というより女性の心理描写の凄さだ。
この作品は女性特有の妬みや嫉みが満載なのだが、それを面白おかしく滑稽に描いている。
驚いたのは、男性目線でこの心理がわかるとは只者じゃないな…観察力といい、俯瞰力…
なんて思っていたら本当に只者じゃなかった。
表向きは作家で、裏の顔はスパイ。まるで007だ。
モームはMI6(イギリス情報局秘密情報部)の諜報員だったので、そこで培われた観察眼なのだろうか。
それ以前は医師として従事していたり、色んな顔をもつモーム。
顔といえば、どことなくまっちゃんに似てると思ったのは私だけだろうか。